どうも、ヤンセンです。
今回も引き続き、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。
伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は双一シリーズの後半・26~30作目まで紹介します。
Contents
双一の誕生日(伊藤潤二コレクション26)
あらすじ
GWに双一の家を訪れた路菜。路菜の誕生日をみんなで祝っていると、実は双一の誕生日も路菜と同じだという。そこで路菜は、双一の祖母の話を聞くのだが…
双一の祖母は自分を預言者だと思いこんでいて、双一は双子として生まれると予言します。実際には双一ひとりだけ生まれたのですが、双一の祖母は双子だと言い張り、存在しない弟、双二(そうじ)の世話をします。
出典:伊藤潤二 双一の誕生日(伊藤潤二コレクション26)
この存在しない弟の世話をする、というあたりがなぜだか自分の琴線に触れて、双一シリーズの中ではわりと好きな話です。
双一の勝手な呪い(伊藤潤二コレクション27)
あらすじ
夜中に一人、林で藁人形に釘を打ち付ける双一。すると、同じ学年の大谷が腹痛で倒れてしまう。その後も双一は、同じ学年の生徒に呪いをかけ、勝手に問題を解決した気になっていく…
本作では、双一がクラスメイトの関係に勝手な想像をめぐらし、呪いをかけていきます。
言い争っていた2人の一方を呪ったときは、一応もう一方からお礼の品をもらいます。しかし、仲良しグループが実は腹の中では憎み合っていると決めつけて呪いをかけたときは、クラスメイトの前で糾弾され恥をかきます。
本作で一番怖いのは、林の持ち主の男です。木に釘を打ち付けて傷をつけた双一に腹を立て、斧を投げつけてきます。幸い斧は外れるのですが、頭に当たっていたら即死です。結局、呪いよりも人間のほうが怖いという作品。
あと、双一の姉・さゆりが髪を伸ばして地味に色気づいてます。このあたりは特に説明されないのですが、作中での時間経過を感じさせて良いです。
四重壁の部屋(伊藤潤二コレクション28)
あらすじ
双一の兄・公一は、双一の立てる騒音で試験勉強に集中できない。父親に相談し、部屋の防音工事を開始するが、やってきた大工は奇妙な男で、しかも双一も作業を手伝い始め…
公一の部屋を防音工事した結果、壁が四重にされてしまいます。この、”四重壁の部屋”というワードだけでなんだかワクワクします。伊藤先生はこのあたりのワードセンスも素晴らしいです。
この壁と壁の隙間には空間があり、その中で公一と双一が追いかけっこをするのですが、若干閉所恐怖症気味の自分としては、このシーンはなんだかゾワゾワしました。
本作はいわゆる怪奇現象は起きないのですが、防音工事に互須(たがいす)という大工がやってきます。この互須の見た目が気持ち悪い。しかも、本来工事を依頼した工務店は、互須のことは知らないといいます。こういう、何の説明も無く現れる奇怪な存在というのには、なんとも言えない気持ち悪さを感じます。
出典:伊藤潤二 四重壁の部屋(伊藤潤二コレクション28)
棺桶(伊藤潤二コレクション29)
あらすじ
双一の祖父が亡くなった。亡くなる直前、双一の祖父は自らの死を予期したかのように、庭で自分の棺桶づくりを始める。それを見た双一は、自分にも棺桶を作って欲しいと言い出して…
亡くなったおじいちゃんは双一の呪い(?)で生き返らされます。
亡くなった近親者を生き返らせるというストーリーの場合、たいていもっとシリアスになるのですが、双一の場合は自分の気に入る棺桶を作らせるためという、割とどうでも良い理由。双一は不思議な力はあるものの思考回路は完全に小学生なので、まあこんなものでしょう。
双一に棺桶を作ってあげるときのおじいちゃんの笑顔がすばらしいです。皆から気味悪がられる双一ですが、おじいちゃんにとってはかわいい孫なんですね。
おじいちゃんに何度も棺桶を作らせる双一に対し、公一が”うるさいお前はおじいちゃんを何だと思ってるんだ”というシーンがあるんですが、公一のおじいちゃん思いなところが見えて少しほっこりしました。
噂(伊藤潤二コレクション30)
あらすじ
最近クラスで双一に関する良い噂がたくさん流れている。車に惹かれそうになった子供を助けたり、人気ミュージシャンといとこ同士であることが判明したり。ついにはクラスで一番かわいいという咲山とつきあっているという噂が流れ、咲山は驚いて否定するが…
伊藤潤二作品の密かな(?)人気キャラクター・淵さんと双一のコラボ作品。
この話で、町外れの乙女ヶ淵という沼に浸かると美容にいいという噂が流れます。この噂はすべて双一が広めたものですが、双一のクラスメイトの咲山みどりが噂を信じて沼にやってきます。すると沼の中から巨大な人影が。なんと本当にファッションモデルの女(淵さん)が沼に浸かっていたのです。
ここでの見どころは淵さんが沼から登場するシーン。4ページに渡って描かれる登場の様子は、ゴジラが海から出てくるときのような迫力。そして出てきた淵さんの巨大なこと。隣にいる咲山の約4倍はありそうです。小学6年生女子の平均身長が146cmらしいので、淵さんの身長は約5.8mあることになります。いくらなんでも巨大すぎなんですが、このインパクトで心に残るのでありなんでしょう。
出典:伊藤潤二 噂(伊藤潤二コレクション30)
この作品はラストシーンも割と好きで、クラスメイトの咲山の逃げる後ろ姿とともに、「双一くん 無事だといいけど…」というモノローグで終わります。もう投げっぱなしもいいとこなんですが、ホラーものの場合、きれいなオチがつくよりも、こういう余韻を残すラストのほうが好きです。
おわりに
今回は、「伊藤潤二コレクション」より、双一シリーズ後半の26~30までを紹介しました。双一シリーズ後半は、双一以外にも不思議なキャラクターが登場し、世界が広がります。実は、双一シリーズはこれで終わりではなく、新作も発表されているので、そちらも合わせて読んでみてはいかがでしょうか。
「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集3 双一の勝手な呪い」で今回紹介した作品を読むことができます。
伊藤潤二傑作集(3) 双一の勝手な呪い (朝日コミックス)
本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。
それでは、また。