どうも、ヤンセンです。
今回も引き続き、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。
伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は富江と並ぶ代表作である双一シリーズの前半・21~25作目まで紹介します。
伊藤潤二傑作集(3) 双一の勝手な呪い (朝日コミックス)
Contents
楽しい夏休み(伊藤潤二コレクション21)
あらすじ
夏休みに、親戚の家に遊びに来た裕介と路菜。またいとこの3人のうち、公一、さゆりとはすぐに打ち解けた2人だったが、双一はなかなか姿を見せず…
伊藤潤二の富江と並ぶ代表作、ホラーコメディの双一シリーズ第一作。
僕はこの作品を前知識なしで読んだのですが、正直最初はホラー漫画かと思ってました。双一のビジュアルもちょっと気味が悪いし、人形を使って路菜や公一を呪うことで、実際に2人に悪い事が起きて、嫌な気分になったからです。この後もっと破滅的な出来事が起こるのではないか…と怪しみながら読みました。結局そういう事件は起きないのですが。
本作の終盤、双一の嫌がらせに怒った路菜が双一にビンタするのですが、その結果、双一が口に入れていた釘が頬を突き破るという衝撃展開に。リアルに起きたらかなり大事件ですが、双一の母親は「自業自得だからいいのよ」と軽く言っていましたが、ほんとにそれでいいのか。
出典:伊藤潤二 楽しい夏休み(伊藤潤二コレクション21)
また、この事件で路菜にビンタされた双一が泣き出すのですが、「ビンタで泣き出す」→「双一は主人公(路菜)にとって自力で対処可能な存在である」ということです。双一は抗うことのできない超自然的な相手ではなく、変な力を持ってるけどただの子供だとわかりました。
楽しい冬休み(伊藤潤二コレクション22)
あらすじ
高校3年生の弓子は、偶然降りた深沢駅で、通りすがりの少年に旅館の場所を聞くが、教えられた場所はたくさんの藁人形が打ち付けられた林で…
傷心旅行に来ている弓子に対し、双一は弓子の血をもらう代わりにと言って弓子の失恋相手を藁人形で呪います。弓子の首には実際に歯型のような傷があり、かつ失恋相手が事故に遭ったというニュースが流れることで、弓子は双一の呪いに恐怖します。
出典:伊藤潤二 楽しい冬休み(伊藤潤二コレクション22)
結局、最後は雪を食べすぎた双一がお腹を壊す、というオチで終わるのですが、この話も前回も、オチ以外はふつうにホラーのストーリーラインなんですよね。中盤まではホラーだと思わせて、最後のオチのギャップで笑わせる、というのがこの2作のパターンのような気がします。
また、どうやら弓子の失恋の相手は前作に登場した双一の親戚・裕介らしいのですが、裕介はまだ中学2年生。弓子は高校3年生と名乗っており、年の差があります。弓子が4つ下の裕介を好きになり振られたのか、それとも弓子は本当は中学生なのか、そのあたりの事情は一切明かされません。狙って曖昧にしているのかどうかもはっきりせず、ちょっと引っかかりました。
双一の楽しい日記(伊藤潤二コレクション23)
あらすじ
夏休みに、再び親戚の家を訪ねた路菜。双一の留守中に双一の部屋で見つけた日記帳には、予言のような内容が書かれていて…
双一の日記には将来路菜が遭う災難について書かれていたり、双一の顔をした蚊が路菜を刺すと、刺されたところから触手のようなものが生えてきたりと、双一には間違いなく超自然的な能力があります。路菜はそれを恐れている面もあるのですが、双一の家族は、それを知りながらも、何故か何事もなかったかのように振る舞います。そのあまりの白々しさに、双一以外の家族も実は超自然的な能力を持っているのではないかと邪推してしまいました。
本作終盤では、双一が同じ学校の安藤百合子に宛てて書いたラブレターの中身をばらされそうになり慌てるというシーンがありますが、あんな変人でも好きな子がいるのだなと思うと、少し双一のことが好きになりました。
双一の家庭訪問(伊藤潤二コレクション24)
あらすじ
新任教師の柳田は、双一を更生させようと、夏休み中も毎日双一の家を訪ねていた。初めは嫌がっていた双一だが、いつの頃からか柳田になつくようになり…
出典:伊藤潤二 双一の家庭訪問(伊藤潤二コレクション24)
双一シリーズはホラーコメディのはずですが、本作は単なるホラーですね。双一の下を毎日訪れていた柳田は、げっそりやせ細り別人のような姿に変わってしまいます。なぜかというと、双一が屋根裏に柳田を模した人形を作っており、その人形が柳田の魂を吸い取っているからです。
これ、怖いです。自分を模した人形を勝手に作られているだけでも気味が悪いのに、それが自分の魂を吸い取っていると言われるとなおさら怖いです。
前作で少し双一に親しみを覚えたのですが、本作を読んでやっぱり双一が恐ろしくなりました。だって、柳田の人形を作って魂を吸うというのは、完全に悪意がありますよね。本作内にはオチが無く救いも無いため、余計にそう感じました。
布製教師(伊藤潤二コレクション25)
あらすじ
夏休み明け、新任教師の柳田の様子がおかしい。双一と一緒に遊び回ったり、理不尽に生徒を叱ったりする。それだけでなく、外見がどう見ても人形なのだ…
本作では、双一の呪いによって教師が人形にすり替わってしまいます。こんなこともできるなんて、本当に双一は何者なのでしょうね。
布でできた柳田の動きは、本当に骨のない人形のようにぶらんぶらんとしているのが伝わってきます。何気なく描かれているのですが、伊藤先生の画力が光るシーンです。
出典:伊藤潤二 布製教師(伊藤潤二コレクション25)
この布製教師は、気に入らないことがあると刃物を持って襲ってきたりします。このように一見人間の形をしている、でも絶対に人としての思考をしていないような相手が襲ってくるのは怖いですね。人形が襲ってくるというのは映画などでよくありますが、それとはまた一味違う怖さです。また、人形に取って代わられていた教師たちはその間意識があったのかということも気になります。
おわりに
今回は、「伊藤潤二コレクション」より、双一シリーズ前半の21~26までを紹介しました。双一シリーズは、一般的にはホラー・コメディと説明される作品ですが、実際読んでみると意外とホラー寄りでした。「人が死んだりしないけど、ちょっと不思議なことが起きる日常のストーリー」くらいの気持ちで読むと楽しめます。
「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集3 双一の勝手な呪い」で今回紹介した作品を読むことができます。
伊藤潤二傑作集(3) 双一の勝手な呪い (朝日コミックス)
本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。
それでは、また。