どうも、ヤンセンです。
今回も引き続き、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。
伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は36~40作目にあたる、「怪奇ひきずり兄弟」2話、その他短編3話の計5編を紹介します。
伊藤潤二傑作集 4 死びとの恋わずらい (ASAHI COMICS)
怪奇ひきずり兄弟 第1話・次女の恋人
あらすじ
引擦(ひきずり)兄弟は両親の残した家で6人で暮らしていた。ある日、次女の成美は家出して学校の先輩・小谷の部屋に転がり込む。成美はほどなくして連れ帰されるが、引擦兄弟は「成美を誘惑した」と言って小谷への仕返しを画策して…
本作「怪奇ひきずり兄弟」は、「双一」シリーズと同じくホラーコメディものです。とい言いつつ、双一シリーズは結構不気味な話も多く、こちらの方がより純粋なコメディに近いと思います。
不気味な顔をした引擦兄弟の中で、次女・成美だけは美しい容姿をしています。そんな成美は、何かあるとすぐに「死んでやる!」と叫び自殺しようとします。ただ、本当に死にたいというよりは、そう言うことで周りが優しくしてくれたりとか、自分がいい思いをするためにそう言っているだけで、本気の苦しみは全然感じられません。
引擦兄弟は「小谷を懲らしめる」という名目で小谷を脅かすのですが、それによってあっさり小谷は死んでしまいます。このあたり、重大な事件のはずですが些末なことのように扱われます。恋人が死んだはずなのに成美も平然としてるし。
双一シリーズは人が死ぬわけではないのに嫌な感じ・不気味さを感じたんですが、「ひきずり兄弟」は人が死ぬ割にコメディ感があるのはなんでなんでしょうね。引擦兄弟のビジュアルやキャラクターがコミカルだからでしょうか。
とりあえず、本作については成美がかわいかった。
怪奇ひきずり兄弟 第2話・降霊会
あらすじ
引擦兄弟の長男・一也は、公園で知り合った心霊に興味のある美女・サチヨの気を引くために降霊会を企画する。自分が降霊すると意気込む一也だったが、なぜか次男の四五郎が苦しみだして…
引擦兄弟は外見はちょっとアレな感じですが、普通に美人の女性に興味があります。サチヨさんを巡って小競り合いをする一也と四五郎の見苦しいこと。
降霊会で四五郎がエクトプラズムを吐くのですが、その後、エクトプラズムはうどん粉だったと判明します。ただ、吐き出すエクトプラズム(=うどん粉)がかなり大量で、自分の胃の中にあれだけのうどん粉を入れることを想像すると気持ち悪くなります。
ラストでは、長男・一也と次男・四五郎が見苦しく争っている最中に、三男・ヒトシが本物のエクトプラズムを吐きます。そのエクトプラズムは、亡くなった引摺家の父親の形になり、兄弟たちをにらんだあと消えます。
このあたり、ストーリー的な派手さはないのですが、よくわからなさ、不気味さが逆に実話系怖い話のような後味があって好きです。
幻痛屋敷
失業中だった古関は、ある資産家の屋敷の住み込みの仕事に就いた。仕事の内容は、ありえない場所が痛むという幻痛に悩む屋敷の息子の世話をすることだったが、その痛む場所というのが…
事故などで失った、今はもう無い手足が痛むように感じる症状を幻肢痛といいますが、屋敷の息子が悩む幻痛とは、自分のいる屋敷の中が痛むように感じるという症状です。痛覚が自分の体の外にまで広がったような感じでしょうか。
古関たち従業員の仕事とは、屋敷の息子が痛む場所をさすること。息子は屋敷の中が痛むように感じるため、彼らは息子が言うままに屋敷の空中をさするのです。従業員たちは馬鹿らしいと思いつつ、給料が良いため従順に働いています。
しかしこの屋敷にずっといると、なぜかみんな自分の痛みに鈍感になっていきます。怪我をして化膿しているのに治療もせず、次第に倒れていく従業員たち。
痛覚が拡張されるという奇想、終盤正気を失っていく登場人物、全てを描き切らず余韻を残すラストと、伊藤潤二作品の魅力が詰まった、かなり好きな話です。
あばら骨の女
ユキの兄のガールフレンド・瑠璃子は毎晩どこからか聞こえてくる不気味な音楽に悩んでいた。音の出所を探しに行くと、公園でハープを奏でる女がいて…
ユキは自分のウエストにくびれがないことに不満を持っており、兄のガールフレンド・瑠璃子のスタイルを羨ましがっていました。そんな瑠璃子の悩み、毎晩聞こえる不気味な音楽は、不気味な女が何かのあばら骨で作ったハープの音色でした。
自らのスタイルに悩むユキは美容整形であばら骨の除去手術を受けるのですが、その手術時、執刀医はあばら骨の除去手術をうけた女が、精神面で問題を抱えて繰り返し手術を受けていることを明かします。
その女がハープの女なのですが、繰り返し手術を行ったことで、女の胸はあばら骨が入り組み、なぜか針金も大量に入っていてぐちゃぐちゃな有様です。もちろん、ホラー漫画なので怖がらせるためにこのような姿に描いたのでしょうが、これを読んだとき私は、「美容整形の先生はなんでこんな風にしちゃったんだよ!」と軽ツッコミしてしまいました。
リアルウンコノオモイデ
あらすじ
伊藤潤二先生の少年時代の思い出。夏祭りの出店で出会った信じられないもの。
本作は4ページの超短編。伊藤潤二先生の子供時代の思い出を描いたエッセイ漫画です。
内容は、タイトルの通りリアルウンコのおもちゃを見つけて買う、というだけの話です。これはこれでノスタルジーを感じて悪くはないのですが、おそらく伊藤潤二作品のファンが期待する内容ではないでしょう。
伊藤潤二コレクションをコンプリートしたい人や、伊藤潤二先生個人に興味がある方は読んでみてください。
おわりに
今回は、「伊藤潤二コレクション」より、「「怪奇ひきずり兄弟」2話、その他短編3話の36~40までを紹介しました。この中でも、「幻痛屋敷」は伊藤潤二作品らしい魅力のある作品で特におすすめです。
「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集 4 死びとの恋わずらい」で今回紹介した作品を読むことができます。
伊藤潤二傑作集 4 死びとの恋わずらい (ASAHI COMICS)
本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。
それでは、また。