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【ネタバレ感想】伊藤潤二コレクション11~15 富江(下)

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どうも、ヤンセンです。

今回も、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。

伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は富江シリーズ後半戦・11~15作目まで紹介します。

ヤンセン
ヤンセン
シリーズ後半は、ホラーというよりも富江と関わることで人生を狂わされた人達に主眼が置かれたストーリーが多いんだ。
パープル
パープル
前半に比べてユーモア要素が多くなってくるのよね


伊藤潤二傑作集(2) 富江(下) (朝日コミックス)

富江・毛髪(伊藤潤二コレクション11)

あらすじ

女子学生の千絵は父親の書斎で桐箱に入った美しい髪を見つける。くせ毛に悩む同級生の美貴がふざけて髪を1本自分の頭につけると、くっついてとれなくなってしまい…

ヤンセン
ヤンセン
富江とお話ししたいといって泣く千絵が百合っぽくていい
パープル
パープル
髪の毛を顔にたくさんつけてるところがすごい気持ち悪かった

富江の髪を植毛した千絵と美貴には、なぜか富江の幻や声が聞こえるようになります。美貴は幻の富江と会話ができるのですが、千絵はいつまで経っても富江と会話できません。富江と会話ができないと言って泣く千絵を見ると、一瞬「あれ?これって百合マンガだっけ?」と錯覚してしまいました

ラストシーンでは美貴の体中から突然、富江の髪の毛が発生し、全身毛むくじゃらになった美貴は倒れてしまいます。このあたり全く説明がなく終わるため、なぜ毛むくじゃらになったのかはわかりません。

富江・養女(伊藤潤二コレクション12)

あらすじ

資産家の老夫婦はこれまで何人もの養女を引き取ってきたが、みんな早死にしていた。ある日、老夫婦の屋敷の庭に行き倒れていた富江。夫婦は富江を養女として迎え入れるが…

ヤンセン
ヤンセン
老婆が肌をチューチュー吸ってくるのは単なるギャグだな
パープル
パープル
最初の方に少しだけ出てくる先代の養女がかわいいわ

 

豪華な洋館に住む老夫婦、家政婦、美しい少女…と、本作はホラーというよりはゴシック・ミステリ的な雰囲気があります。

本作で富江は、庭先で倒れていたところを助けられ、老夫婦の養女となります。養父母には優しい富江ですが、家政婦には養女になったその日から超上から目線になります。ただ、それも富江らしくて逆に魅力的

出典:伊藤潤二 富江・養女(伊藤潤二コレクション12)

本作の終盤でこれまで引き取った養女が早死する謎の真相として、家政婦が毒殺していたからという事実がで明らかにされるあたりもミステリ的です。これまでの富江シリーズとは若干毛色が異なりますが、わりと好きな一作です。

富江・小指(伊藤潤二コレクション13)

あらすじ

4兄弟の末っ子で醜い容貌の弘也は、兄たちが殺してしまった富江の死体の処分を押し付けられる。殺人の濡れ衣を着せられた弘也は、逃亡先の洞穴の中で暮らし始めるが…

ヤンセン
ヤンセン
途中すごいいい話だなって思った
パープル
パープル
富江も三人寄れば派閥ができる…

本作はホラーというより一種のヒューマン・ドラマです。

富江の死体から切り落とされた人差し指、中指、薬指、小指は、弘也によって燃やされ灰になりますが、それぞれが富江として再生していきます。しかし、一人だけ再生の遅かった小指は、他の3人からいじめられてしまいます。

それを見た弘也は、小指に対し、兄たちから虐げられていた自分を重ね合わせ、共感します。美しい富江に言い寄られても全くなびかなかった弘也が、灰になって醜い姿の小指に対しては「愛してる」と伝えるのです。

出典:伊藤潤二 富江・小指(伊藤潤二コレクション13)

ここまでは若干感動すら覚える展開なのですが、弘也が愛してるといった途端、小指は急に美しい姿に変貌し、弘也の元を去ります。結局の所、富江にとって男からの愛というのは、自分の価値を認識するための手段でしかないのです。

富江・少年(伊藤潤二コレクション14)

あらすじ

海岸で傷ついた富江を発見した少年・サトル。サトルは次第に富江のところに入り浸るようになる。それに伴って、だんだんサトルの奇行が目立ってきて…

ヤンセン
ヤンセン
純真だったサトルがなんでこんなことに…
パープル
パープル
サトルが富江に惹かれたのは母としてなのか女性としてなのか…

富江の魅力は子供にも伝わるらしいです。富江の虜になったサトルは、海岸で何度も富江とキスします。少年と大人の女性がキスする姿は、なんとも背徳的です。

出典:伊藤潤二 富江・少年(伊藤潤二コレクション14)

「サトル!子供のうちからそんなことしてたらロクな大人にならんぞ!」と思っていたら、サトルは子供のうちから様々な悪事を行います。万引、ハサミで家具やカーテンを切り刻む、果ては富江と抱き合っていた別の男を刺し殺してしまいます。

ラストでは、道を踏み外したサトルがその後様々な犯罪を繰り返し、最後には死刑になってしまうということが淡々と語られているのですが、ある意味この部分が一番怖いです。サトルは、富江と出会うことで人格が狂ってしまい、人生を棒に振ってしまったのです。

富江・もろみ(伊藤潤二コレクション15)

あらすじ

富江を殺害し、死体をミンチにしてしまった石塚。石塚の友人で造り酒屋の息子の長岡は、富江の再生を防ぐため、酒樽に富江のミンチを入れ出して…

ヤンセン
ヤンセン
”人肉?何を言ってる…これは上等なもろみだ”のとこで超ウケた
パープル
パープル
結局この話に生きた富江は出てこないのよね…

富江シリーズ一番の問題作といっていいでしょう。

富江を殺してしまった石塚は、証拠隠滅のために富江をミンチにするのですが、いくらミンチにしても富江は増殖してしまいます。困った石塚は、造り酒屋の息子、長岡と共に富江を酒樽に入れ、富江が増殖しないようにかき混ぜ続けます。

酒樽に入れ熟成させた富江は、芳醇な香りを放ち始めます。そしてできた酒は男たちを虜にする魔性の美酒となるのです。

出典:伊藤潤二 富江・もろみ(伊藤潤二コレクション15)

本作は、読んでるとき正直笑っちゃいました。ここまで来ると怖がらせるというよりは悪ふざけの領域ですね。それはそれで大変おもしろいし伊藤潤二作品の魅力でもあるのですが。

おわりに

今回は、「伊藤潤二コレクション」より、富江シリーズ後半戦開始の11~15までを紹介しました。今回紹介した作品では、富江に関わったことで人生を狂わされた人々が多数登場します。そんな人々が時には富江に惑わされたり、時には富江に抗ったりする姿を楽しく読むことができました。

「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集2 富江(下)」で今回紹介した作品を読むことができます。


伊藤潤二傑作集(2) 富江(下) (朝日コミックス)
本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。

それでは、また。