読書

【ネタバレ感想】伊藤潤二コレクション41~43 【バイオハウス】【顔泥棒】【睡魔の部屋】

どうも、ヤンセンです。

今回も引き続き、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。

伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズで、今回は41~43作目にあたる、「バイオハウス」「顔泥棒」「睡魔の部屋」の短編3編を紹介します。

ヤンセン
ヤンセン
顔泥棒・睡魔の部屋はどちらも初期の名作だね
パープル
パープル
睡魔の部屋のマリちゃんが健気で好きだわ


伊藤潤二傑作集(5) 脱走兵のいる家 (朝日コミックス)

バイオハウス

あらすじ

悪食を自負する女性・久保田は、勤める会社の社長の別荘に招待される。社長も久保田と同じく悪食趣味があり、社長は久保田を様々なゲテモノ料理でもてなす。しかし、社長が最後に出したメニューは…

ヤンセン
ヤンセン
生のカマドウマ食べるとか…気持ち悪い
パープル
パープル
冒頭のナレーションはそういう意味だったのね…
感想(ネタバレあり)

久保田を超える悪食である社長が、食事の最後に出したのは、何かの生き物の血。ヘビの血は好きだという久保田が「吐き気がするほどまずい」と称するそれは、なんと社長自身の生き血だったのです。

久保田が血を飲むのを拒否すると、社長の態度が一変、久保田に自分の血を飲むように迫ります。ドラキュラみたいに他人の血を吸うのはよくある設定ですが、自分の血を飲まそうというのは一体どういう性癖でしょうか。

そして社長は、自分の首をナイフで掻き切り、首から大量の血を噴出させ、屋敷に血をまき散らしながら逃げる久保田を追いかけます。

ところで、社長の別荘には美しい女性の召使がたくさんいます。この召使たちが、社長の血を浴びたとたん豹変し、社長の血に群がりはじめます。社長の血には何か魔性の魅力があるのでしょうか。おそらく、久保田と同じようにこの屋敷に連れてこられ、社長の血の魔力に魅せられた者たちが召使となったのでしょう。

本作冒頭には「血が欲しい…あの方の血が…」というモノローグがあります。その後悪食をする女性として久保田が登場するため、読者は冒頭のモノローグは久保田のものだと錯覚するのですが、実は召使のものだったんですね。

顔泥棒

あらすじ

転校生の町田は、クラス内に全く同じ顔をした女子が2人いることに気づく。しかし、その女子は双子などではないという。同じ顔をした女子の1人、亀井が、町田の後をついて回りだして…

ヤンセン
ヤンセン
亀井の存在自体が怖い
パープル
パープル
でもちょっとかわいそうな子なのよね
感想(ネタバレあり)

亀井という女子は、特定の人間と長時間接していると、顔形がそっくりになってしまうのです。町田も亀井に付きまとわれ、顔を奪われてしまいます。亀井自身も、顔が変わることを制御はできません。そこで、日比野という男子の気を引くために、美人の顔を写し取ろうとするのです。

顔を取られ屈辱を受けた町田は、仕返しとして「亀井の周囲の人間全員にお面をかぶせる」ことを発案し、亀井への対処に苦慮していた学校側もそれに乗っかります。

いち生徒に対して学校側がそこまでしてよいのか、ここで教師からある事実が明かされます。亀井は年齢・素性が不明で、この学校の生徒でなく、許可なく潜り込んでいるということ。ここがなんかすごい怖い。本当に人間なのか。超自然的な存在ではないか。神のような妖怪のような存在が学校にやってきて、日比野という人間の男に求愛しているというイメージが湧きました。

お面をつけた多数の人間に囲まれた亀井の顔は、多数のお面の姿が混じって崩壊していきます。

本編では、「顔形がそっくりになる」としか語られていません。ただ、冒頭では明るかった亀井が、スケバンである町田の姿になってからは明らかに言動が荒っぽくなっており、内面も相手に引っ張られて変化しているように見えます。

崩壊したのは亀井の姿形だけなのか。内面はどうなるのか。なにもわからないまま話は終わります。

睡魔の部屋

あらすじ

小説家を目指す青年・雄二はここ3日全く眠っていないという。ガールフレンドのマリが理由を聞くと、「夢の中に住むもう一人の自分が現実世界に出て来ようとしている」といい、マリに監視を頼んだのだった…

ヤンセン
ヤンセン
伊藤潤二先生の画力があるから描ける作品
パープル
パープル
マリちゃんが雄二と手を結ぶところが健気でグッときたわ…
感想(ネタバレあり)

雄二が眠ると、夢の中の雄二が現実世界に出て来ようとするのですが、出て来る方法が独特です。夢の中の雄二と現実世界の雄二はリバーシブルのジャンパーのようになっています。そして、現実世界の雄二の口から裏側の雄二が出て来るのです。

最初は手から。リバーシブルなので、現実世界の雄二の手は体の中に埋まってしまいます。目を覚ました雄二は、手袋でも直すように裏返った自分の手を引っ張り、元に戻します。このあたり、伊藤先生の確かな画力があるから表現できるアイデアですね。

雄二が裏返るのを防ぐため、マリは自分の手と雄二の手をガムテープでぐるぐる巻きにしてつなぎます。しかし、夢の中の雄二が出て来る事を防ぐことはできず、マリは現実世界の雄二とともに、雄二の裏側に引き込まれてしまいます。雄二を助けられないと悟ったマリは、最後の瞬間に「いいわ…私も行く」と、雄二とともに裏側に行く覚悟を決めます。

このシーン、最後まで雄二と共に行くことを決意したマリの健気さにぐっときます。マリかわいいし。夢の中の雄二が裏側で生きていたように、現実の雄二とマリも裏側で一緒に生きられたらいいなと思いました。

おわりに

今回は、「伊藤潤二コレクション」より、41~43にあたる短編3話を紹介しました。

「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集 5 脱走兵のいる家」で今回紹介した作品を読むことができます。


伊藤潤二傑作集(5) 脱走兵のいる家 (朝日コミックス)

本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。

それでは、また。