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【ネタバレ感想】伊藤潤二コレクション1~5 富江(上)

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どうも、ヤンセンです。

今回は、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。

伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は1~5作目まで紹介します。

ヤンセン
ヤンセン
“富江”シリーズは、何度も映像化されている伊藤潤二先生の代表作だよ
パープル
パープル
美しい富江が、切り刻まれるとグロテスクな富江になるのがゾクゾクする…


伊藤潤二傑作集(1) 富江(上) (朝日コミックス)

富江(伊藤潤二コレクション1)

あらすじ

クラスメイトの富江がバラバラ死体で見つかった。と思ったら、殺されたはずの富江が教室に現れる。動揺する生徒たち。そこには、富江が生きていたというだけでない、隠された理由があった…

ヤンセン
ヤンセン
デビュー作とは思えない完成度!
パープル
パープル
映画的なカット割りが多いのも特徴ね

富江は、どれだけ体がバラバラにされても、バラバラの体の各部分が成長し、それぞれがまた富江となる、という存在です。ただ、本作の重要な点は、富江という存在というよりも、富江が”発生”した経緯にあります。

富江は、遠足中にクラスメイトの山本と痴話喧嘩した拍子に、崖から転落して死亡してしまいます。担任教師の高木とクラスメイトは、山本をかばうために富江の体を42個に分割し、クラス全員に一つずつ配り、各自が見つからない場所に廃棄します。

出典:伊藤潤二 富江(伊藤潤二コレクション1)

本作での富江の恐怖は、者が復活したと言う点に加え、自分たちが犯した犯罪が露見するのではないかという不安・焦りが掛け合わされることで、単なるホラーとは違う心理的ストレスを感じるのです。代表作となるのも頷ける良作です。

富江 PART2 森田病院編(伊藤潤二コレクション2)

あらすじ

腎臓病で森田病院に入院している雪子。雪子のボーイフレンドの正には、雪子に隠して麗子という新たな恋人がいるようだった。麗子を見ていた正は、なぜか麗子を殺したい衝動に駆られ、殺害してしまう。殺害された麗子の腎臓は雪子に移植されるのだが…

ヤンセン
ヤンセン
富江は近づく男をみんな破滅させるな
パープル
パープル
麗子はほんと魔性の女ね

本作に登場する麗子とは、富江が名乗った偽名です。富江を愛した男性は、なぜか富江を殺害しバラバラにしたい衝動に駆られます。今作以降も、富江は繰り返し男性から殺害され、そのたびに復活します。

出典:伊藤潤二 富江 PART2 森田病院編(伊藤潤二コレクション2)

雪子に移植された富江の腎臓は、雪子の体内で成長し、レントゲン写真には人間の頭部が写ります。その後、手術により雪子から頭部が取り出されますが、その際に腹から出てきた頭が「私は本当は富江っていうの」と名乗るのです。

本作は次の「富江・地下室」へとつながる話なので、正直これ単体ですごくおもしろいという感じではないです。「富江・地下室」とセットで読んだ方が楽しめると思います。

富江・地下室(伊藤潤二コレクション3)

あらすじ

森田病院の地下室では、雪子から摘出された腎臓から頭・手足が生え、奇妙な成長を遂げていた。成長した腎臓は富江となり、地下室に残された残りの腎臓を焼き払ってしまう。一方、雪子は容姿・性格が富江のように変貌する…

ヤンセン
ヤンセン
雪子ちゃんがあんなことになっちゃうとは…
パープル
パープル
富江が別の富江を焼くところ、気持ち悪い…

雪子から摘出された腎臓は、病院の地下室で培養されると、だんだんと成長し、男への甘い言葉を発し始めます。化け物の姿の富江が愛の言葉をささやくのは、正直気持ち悪いです。

また、摘出された富江は2つに分けられるのですが、一方は成長が遅く、もう一方は早く成長し人間の姿となります。ここで、早く成長した方の富江は、成長の遅い富江にガソリンをかけ、焼き殺してしまいます。なぜか富江には、他の富江を抹殺しようとする本能があり、今後もこのような争いが幾度も発生します。

本作では、富江の細胞が体内に残った雪子が、だんだん容姿・性格ともに富江のように変化してしまいます。個人的には、容姿や性格が別人のように変化してしまうのは、自分の人格を失ったまま肉体は存在し続けるという点から、肉体的な死よりも恐ろしく感じます。

富江・写真(伊藤潤二コレクション4)

あらすじ

高校で写真部の月子は、友人たちに意中の相手の写真を販売していた。風紀委員の川上富江にそれを見咎められた月子。そんな中、月子は、自身の意中の相手、山崎から富江の写真が欲しいと告げられて…

パープル
パープル
急に学園ものにチェンジして楽しかった
ヤンセン
ヤンセン
富江が風紀委員になってるのもおもしろい

富江の写真を撮影すると、なぜか醜い姿で撮影されるという設定は今作から登場。また、富江に魅了された男が富江の言いなりとなって殺人を行うというのも今作から出てきます。

今作を読んでいて感じたのは、高飛車な富江ですが、富江自身も自分の中に存在する醜い部分に対して恐怖しているのだと言うことです。そう考えると、自らの宿命から逃れられない富江は、哀れな存在でもあるのです。

出典:伊藤潤二 富江・写真(伊藤潤二コレクション4)

月子にバケモノ呼ばわりされて理性を失った富江。そして苦しみだした後、顔に人面のできものができてしまいます。富江は取り巻きの男に命じ、できものを切除しようとしますが、男たちは夢中になってやった結果、なぜか富江の首を切り落としてしまいます。ここはコントみたいで笑ってしまいました。

 

富江・接吻(伊藤潤二コレクション5)

あらすじ

富江の取り巻きの男たちは未だに月子を殺そうと付け狙っていた。そんな中、取り巻きの男に襲われた山崎を自宅で介抱する月子。誰もいないはずの自宅で、富江の声がすると山崎が言い出して…

ヤンセン
ヤンセン
富江に拒絶されて自殺する木股くんがかわいそうすぎる
パープル
パープル
ビニールシートから生まれた富江が宇宙人みたい

月子の部屋に響く富江の声。カーペットに染み込んだ大量の富江の血から、富江が再生しようとしていたのです。再生した富江を、山崎がカーペットの下から引きずり出して抱き合うシーンは、かなり気持ち悪いです。

そして、恐ろしい姿の富江が、山崎に対し「この部屋で私達の子供を育てるの」などと愛の言葉を交わすのですが、2人のその先に破滅しか想像できず、見た目の気持ち悪さ以上に嫌な気分になりました。

出典:伊藤潤二 富江・接吻(伊藤潤二コレクション5)

また、今作のラストには、再生した多数の富江がキノコのようにニョキニョキ生えて来るところがあります。ここはビジュアル的にも面白く、作者も笑わせにかかってるんじゃないか?と思いました。

おわりに

今回は、「伊藤潤二コレクション」より、富江シリーズ序盤の1~5までを紹介しました。

「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集1 富江(上)」で今回紹介した作品を読むことができます。


伊藤潤二傑作集(1) 富江(上) (朝日コミックス)
本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。

それでは、また。