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【ネタバレ感想】伊藤潤二コレクション16~20 富江(下)

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どうも、ヤンセンです。

今回も、人気ホラー漫画家・伊藤潤二先生の短編シリーズである、「伊藤潤二コレクション」を読んだ感想をまとめました。

伊藤潤二コレクションは、約120本の短編からなるシリーズなのですが、今回は富江シリーズの最後を飾る16~20作目までを紹介します。

ヤンセン
ヤンセン
最後の3作は富江シリーズの中でも特に好きな作品なんだ
パープル
パープル
無邪気な子供姿の富江が出てくるのも可愛くてポイント高いわね


伊藤潤二傑作集(2) 富江(下) (朝日コミックス)

富江・ベビーシッター(伊藤潤二コレクション16)

あらすじ

ベビーシッターの衿田は臨時に派遣された家で、マリナという赤ん坊の面倒を見ることになったが、なぜかマリナとともに独房のような部屋に監禁されて…

ヤンセン
ヤンセン
マリナの両親は一体何者なんだ?
パープル
パープル
お馬さんごっこの時に袴田さんがやけくそで言った”ひひーん”もおもしろかった

赤ちゃんのマリナは心臓から頭が生えてきたような奇怪な姿をしているのですが、「どんな姿でもこれは赤ちゃんなんだわ…」と思い直してマリナの面倒をみようとする衿田さん。偉いですね。自分なら速攻で心が折れると思います。

本作の恐怖のキモは、マリナとともに監禁された状態でマリナの両親が逮捕され、助けの来る見込みのなくなった衿田さんが徐々に正気を失っていくところだと思います。

このマリナというのはつまり富江なのですが、もはや生きてマリナの部屋を出られる望みがなくなった後も、自ら死を選ばない限りはすぐに死ぬわけではありません。いずれ来る破滅を知りながら過ごす絶望の時間…気が狂いそうになるのもわかります。

富江・ある集団(伊藤潤二コレクション17)

あらすじ

最愛の恋人・尚子を病気で亡くした梅原は、友人の宮川からある集会に誘われる。そこでは、大勢の男達の前で富江が女王のように振る舞っていて…

ヤンセン
ヤンセン
梅原は富江シリーズでは唯一といっていいほど富江に魅了されなかった主人公だね
パープル
パープル
そう?あのラストは心の中に富江が棲みついてるってことかも

梅原が訪れる集会では、大勢の男達が富江に一応は富江に従っているのですが、内心は他の男たちを差し置いて富江を自分のものにしようと狙っています。そんな男たちの嫉妬うずまくやりとりが面白いです。

また、本作のラストでは、大勢の男達が一斉に富江を殺そうと襲いかかり、結果的に男たちがわけもわからないままお互いを殺してしまいます。普通誰かを殺そうってときは、相手のことをよく見るもんだと思うんですけどね。富江を殺すことしか頭にない男たちが、もみくちゃになりながら刃物を振り回すあたりはちょっとコメディのようにも見えます。結果は悲惨なんですけどね。

富江・通り魔(伊藤潤二コレクション18)

あらすじ

保子の妹・アヤカは非常に美しい少女。家族の誰にも似ていないアヤカを不審に思う保子だったが、同じ町内にアヤカと全く同じ顔の美しい少女が他にもいることが判明して…

ヤンセン
ヤンセン
アヤカは小学生のくせに妖艶すぎてやばい
パープル
パープル
超好きな話だわ

富江最終シリーズ最初の1作。同じ顔を持つ少女たちは、赤ちゃんのころに謎の男に富江の血液を注射されていたのです。謎の男の目的は、富江が老いて醜くなる姿を見ること。その計画を聞いた保子は、妹を疎ましく思いつつも、妹の命を守ることを誓うのです。

これ自体も面白いしワクワクする展開なのですが、本作は個人的には他にも好きなポイントが2つあります。一つは、富江の血液を注射された3人の少女たちが、手下にした少年を使ってお互いを殺し合うところ。この辺はもはや少年漫画としても通用する設定ですね。もう一つは、アヤカが保子の想い人・雪夫にしなだれかかるところ。小学生の少女が富江化して妖しく抱きついて来るシーンは、背徳感でゾクゾクしてしまいます。

出典:伊藤潤二 富江・通り魔(伊藤潤二コレクション18)

ラストも今後の戦いを予感させるコマで終わっており、すぐに次の話を読みたくなってしまいます。このラスト1コマはジャンプのマンガの引きのコマとしてもいけるんじゃないでしょうか。

富江・トップモデル(伊藤潤二コレクション19)

あらすじ

人気ファッションモデルのリョウは、カメラマンに紹介された美女・富江に夢中になる。様々な手段で富江の気を引こうとするリョウだったが、富江は一向にその気にならず…

ヤンセン
ヤンセン
醜い自分に釣り合うように相手を醜く傷つけるというのは悲しいな…
パープル
パープル
顔が再生する途中の富江が漫☆画太郎のキャラっぽく見えた

富江最終シリーズ中盤の1作。トップモデルのリョウは、富江に強引に迫った仕返しに、富江の放った刺客によって顔に取り返しのない傷をつけられてしまいます。自暴自棄になったリョウは、富江の顔にナイフで傷をつけます。

ここでのリョウの行動には2つの解釈ができると思います。1つは、自らの美しさを鼻にかけ、リョウになびかない富江に対し、その美しさを奪うことで自分のものにしようという気持ち。もう1つは、醜くなった顔の自分と美しい顔の富江では釣り合わないため、富江も醜くすることで、自分との釣り合いを取りたい気持ち。

出典:伊藤潤二 富江・トップモデル(伊藤潤二コレクション19)

”富江・小指”にも、主人公・弘也が、美しい顔の富江には全く興味がなかったのに、焼けて灰になったコユビには惹かれるというシーンがありました。パートナーとしてより美しい相手を選ぼうとする人もいれば、むしろ美しくない相手が自分にふさわしいと考えることもあります。このあたりの心理は、(パートナー選びではないのですが)自分にも心当たりがあります。

富江・老醜(伊藤潤二コレクション20)

あらすじ

成長したアヤカと保子は、謎の男の援助を受けながら生き永らえていた。富江の血液を注射された舞・美穂も死亡し、残されたアヤカは、保子とともにある洋館に住み始めるが…

ヤンセン
ヤンセン
ラスト数ページの展開が想像のはるか上を言ってて笑った
パープル
パープル
これで富江シリーズが終わっちゃうのはもったいないわね…

富江最終話。なぜかアヤカが館の主人、保子が家政婦となって生活します(妹なのに「お嬢様」とか呼んだりする)。

奔放なアヤカを自由にさせていては守りきれないと判断した謎の男(リョウ)と保子は、アヤカをコンクリ詰めにしてしまいます。そしていきなり数十年の月日が経ち、リョウと保子は老いたアヤカを見るためにコンクリを破壊し始めます。

出典:伊藤潤二 富江・老醜(伊藤潤二コレクション20)

ていうか何でいきなり何十年も経っとんねん!とまずツッコんでしまいたくなる展開。そして引っかかるのが、リョウと保子がお互いを「じいさん」「ばあさん」と呼び合っていて、完全に夫婦みたいになってるところです。何十年も(富江を老いさせるという)同じ目的の元に一緒に過ごしていたので、夫婦みたいな感じになっちゃったのでしょう。

また、結末も結局何も解決してない感じです。この最終シリーズの3話は、もはやホラーではないのですが、超面白いですし富江シリーズでは一番好きなパートです。

おわりに

今回は、「伊藤潤二コレクション」より、富江シリーズ後半に当たる16~20までを紹介しました。富江シリーズ最後の3作はストーリー、キャラクターともに個性的で、とても楽しく読めました。

「伊藤潤二コレクション」は、kindle版だと1作ずつ110円~220円で購入可能ですので、興味のある作品から読むことができます。また、紙の本の場合は「伊藤潤二傑作集2 富江(下)」で今回紹介した作品を読むことができます。

伊藤潤二傑作集(2) 富江(下) (朝日コミックス)

本記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ読んでみてください。

それでは、また。