読書

【読書】父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

どうも、ヤンセンです。

今回は「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を紹介します。

帯でやたらに”〇〇氏絶賛!”とアピールされており書店で気になった方もいるかもしれません。僕も何かの記事で見て、「異様に面白い」というコピーにつられて買ったクチです。

経済学を経済学者のものにするな

この本では市場経済の成り立ち、金融の仕組みなどが紹介されていますが、最も伝えたいメッセージは「経済学を経済学者のものにするな」ということだと思います。

経済は、世の中のさまざまなことに大きな影響を及ぼします。当然、自分の人生にも。しかし、多くの人は「経済のことは難しくてわからない」「経済のことは専門家にまかせよう」と考えています。

そのことについて、本書では以下のように書かれています。

経済を学者にまかせるのは、中世の人が自分の命運を教会や異端審問官にまかせていたのと同じだ。つまり、最悪のやり方なのだ。

中世の支配者が教会や異端審問官を利用して自らの権力を維持していたように、現代の支配者も経済学を利用して自らの権力を維持していると主張しています。では、現代の支配者とは誰か。政府のことを指しているのではなく、圧倒的な富を保有する超富裕層のことを指すのだと思います。

経済学は公式のある神学

本書では、「経済学を経済学者のものにするな」と書かれていますが、そもそも「経済には本物の専門家は存在しない」とも書かれています。いったいどういうことでしょうか。

ここで、イギリス人の人類学者E・E・エヴァンス=プリチャードが行った、アフリカのアザンデ族の調査のエピソードが紹介されます。

アザンデ族と生活を共にした彼は、人々が占い師に絶大な信頼を置いていることを発見した。(中略)しかし、予言がまったくの的外れであることも多かった(中略)占い師への信頼が揺るがない理由について、次のような結論に至った。

「アザンデ族の人たちも予言が外れる理由を知りたがったが、あまりに迷信に囚われすぎていたので、予言が外れる理由も迷信で考えていた。(後略)」

続けて著者は、経済予測が間違った時も、その間違いが経済理論によって説明されると言います。そしてこう言うのです。

現代の専門家は、アザンデ族の占い師とどこが違うというのだろう?

著者は、そもそも、経済学とは科学ではない、と考えているわけです。「経済学は公式のある神学」という言葉はその事を表しています。

その理由は次のように書かれています。

科学実験とは違って、実験室で経済状況を完全にコントロールして正当性を証明することはできないからだ。

ここで、「経済学は科学ではない」という話は個人的にはすんなり受け入れがたい部分がありました。別に経済学の肩を持つわけじゃないけど。そもそも科学の定義って何?みたいな話かもしれませんが。

過去のパターンを分析して何らかの法則を見出そうという試みは科学的にも思えます。一方、扱う対象が人間の行動である以上、結果を予測することが困難なことも確かだと思います。本書の中でも、人間の「先読み」によって経済政策が思惑通りの効果が得られない、という例が紹介されています。

経済の目をひらこう

これだけ経済学・経済学者にネガティブなことを書いていますが、著者も経済学者です。では、著者は経済学に一体どのようなスタンスで臨んでいるのでしょうか。本書中では、経済学者を次のように説明しています。

経済学者はどちらかというと科学者ではなく(中略)哲学者のようなもの

著者は別に、経済学が不要なものだと言っているわけではありません。しかし、それは専門家でないと理解できないような難解な科学ではない、そもそも専門家なんていない。誰にも正確に未来は予測できない、だけどみんなにとって重要なものだ、だから、あなたにも経済について知って、考えてほしい。それが、「経済を経済学者のものにするな」というメッセージなのです。

ここまで書いたことは、実は本書ではエピローグの十数ページで語られている内容です。個人的には、本書は極論このエピローグさえ読めばよいのではないかとも思います。

本編では、経済についての様々な説明があります。これらの経済についての説明は、「経済学を経済学者のものにしない」ために、読者に経済について知ってもらうためのものです。

もちろんその知識も重要なのですが、「なぜ自分が経済について知らなければいけないか」を知ってもらう=「経済の目をひらく」ことが、本書で著者が期待することだと思います。

まとめ

今回は「父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」を紹介しました。

本記事では、主にエピローグの内容を紹介したのですが、本編も面白い話があり興味深く読みました。特に、リチャード・ラドフォードが書き残した、大戦中の捕虜収容所で、タバコを通貨とした経済が発展したというエピソードはとても面白いです。

これを読んだから経済の知識がすごくつく、という本ではないですが、読みやすい本なので、経済読み物として楽しめる本ですので、ご興味のある方はご一読ください。

それでは、また。

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